2026年11月7日の朝、神戸空港からスカイマークの737-800が1機、特別なチャーター便として飛び立つ予定です。退役するJA737Nの、お別れのフライトです。途中の中部国際空港では、着陸するように滑走路へ近づき、車輪を着けずにまた上がっていく「ローパス」も計画されています。
この機体の目印は、翼の先です。国内のほかの737-800は、翼の先が上へ曲がって立ち上がっています。この立ち上がった部分がウイングレットで、国内で今飛んでいる737のうち、ウイングレットがないのはJA737Nだけ。2007年から19年、スカイマークが歴代の機材の中で最も長く使ってきた1機でもあります。
JA737Nをたどっていくと、スカイマークと737-800の歩みも見えてきます。日本に最初に入った737-800も、最後に入った737-800も、スカイマークの機体。翼の先が平らなまま退役した737-800もほかに5機あり、イギリスや韓国、トルコなどへ移っていきました。そして2026年には、翼の先が上下に分かれ、赤いハートが2つ描かれた後継の737-8がやってきました。
2026年10月時点の情報です。スカイマークの発表と報道は10月20日に確かめました。
2007年から飛ぶJA737N
JA737Nがスカイマークで飛び始めたのは、2007年8月のこと。「JA737N」は機体記号で、1機ずつ決まった番号です。車でいうナンバープレートにあたり、航空ファンのあいだでは「レジ」とも呼ばれます。スカイマークの737-800の機体記号は、受け取った順にJA737H、JA737K、JA737L、JA737Mと最後の1文字が進んでいて、JA737Nは5機目にあたります。
| 機体記号 | JA737N |
|---|---|
| 機種 | ボーイング737-800(型式の表記は737-8HX) |
| 製造番号/ライン番号 | 36845/2339 |
| スカイマークでの運航開始 | 2007年8月 |
| 座席 | 普通席だけの177席(スカイマークの737-800に共通) |
| 翼の先 | ウイングレットなし |
ライン番号は、ボーイングの工場で組み立てられた順番を表す番号です。小さいほど早く造られた機体で、あとでほかの737-800と比べます。
スカイマークは、チャーターの案内でこの機体を「N号機」と書いています。航空ファンのあいだでは「Nくん」と呼ばれることもあります。

ウイングレットのない翼の先
JA737Nには、ウイングレットがありません。ウイングレットは、翼の先で上に立ち上がった、小さな翼のような部分。翼の先にできる空気の渦を抑えて、燃費をよくするためのものです。
737-800のウイングレットは、翼からなめらかに曲がって立ち上がる「ブレンデッド・ウイングレット」が基本の形です(ブレンデッドは「溶け込ませた」という意味)。737-800には、新しく造るときに付けた機体も、あとから付けた機体もあります。スカイマークは、国内で現役の737の中でウイングレットを付けていないのはJA737Nだけだと案内しています。

長崎空港を離陸した直後に撮った1枚です。翼の先は上に曲がらず、そのまま切れています。翼の下に書かれた機体記号「JA737N」も読めます。
同じスカイマークの737-800でも、2009年12月から飛んでいるJA737Yには、ウイングレットが付いています。神戸空港で撮ったJA737Yと、翼の先を並べて見比べてみてください。JA737Yのウイングレットには、赤いハートが1つ描かれています。

退役した5機
ウイングレットのない737-800は、以前はほかにもありました。FlyTeamの2023年5月の記事は、JA737Nのほかに、すでに退役したJA737H・JA737K・JA737L・JA737M・JA737Pの5機を挙げています。どれも2005年12月から2008年1月にかけて受け取った、スカイマークの初めのころの737-800です。
5機は2013年から2016年にかけてスカイマークを離れ、海外へ移りました。JA737HはG-DRTU(イギリスのジェット・ツー)、JA737KはHL8000(韓国のティーウェイ航空)、JA737LはB-223J(貨物機に改修されて中国の中州航空)、JA737MはHL8020(韓国のチェジュ航空。2022年12月に退役)、JA737PはTC-TJU(トルコのコレンドン・エアラインズ)です。このうちG-DRTU、B-223J、TC-TJUには、移った先でウイングレットが付きました。登録記号もウイングレットも、2023年5月の記事の時点の情報です。
737の翼の先には、上下に分かれる型もあります。違いは「飛行機の機種を見分ける、787とA350や737とA320の違い」に写真つきで書きました。JA737Nは、そのどれも付いていない737-800です。
スカイマークと737-800
スカイマークは1998年、ボーイング767-300ERで羽田—福岡線を飛び始めた会社です。737-800を入れ始めたのは2005年12月で、このとき受け取ったJA737Hが国内で最初の737-800になりました。ANAが737-800を入れたのは2008年6月なので、2年半早かったことになります。
| 年月 | スカイマークの機材のできごと |
|---|---|
| 1998年8月 | 767-300ERの1号機を受け取る(9月に羽田—福岡線で初就航) |
| 2005年12月 | 737-800の1号機JA737Hを受け取る(国内で最初の737-800) |
| 2007年8月 | JA737Nが飛び始める |
| 2009年9月 | 持っている機材を737-800にそろえる |
| 2014年6月 | エアバスA330-300で羽田—福岡線を飛び始める |
| 2015年1月 | 民事再生手続きの開始を申し立てる |
| 2017年 | 737-800を3機、追加で発注する |
| 2019年6月 | JA73ACを受け取る(日本に最後に入った737-800) |
| 2026年4月 | 737-8の1号機JA738Aを受け取る(日本の航空会社で初めての737 MAX) |
| 2026年5月 | 737-8が羽田—福岡線で就航 |
| 2026年9月 | JA737Nの退役チャーターを発表 |
| 2026年11月 | JA737Nの退役記念チャーター(7日の予定) |
A330-300は、全席を広めの座席にして羽田—福岡線と羽田—新千歳線に入れた機体でした。その後、運航をやめて5機ともリース会社へ返しています。飛んだのは1年足らずで、会社はまた737-800だけに戻りました。
受け取った737-800は全部で36機。2016年までに7機が退役し、その中には、JA737Nと同じくウイングレットのない5機も入っていました。
日本に入った最後の737-800
民事再生(裁判所の手続きのもとで、事業を続けながら経営を立て直す仕組み)の手続きを終えたあとの2017年、スカイマークは737-800を3機追加で発注しました。2018年8月に就航したJA73AA、2019年5月のJA73AB(今のピカチュウジェットBC1)に続いて、3機目が2019年6月に受け取ったJA73ACです。日本に入った737-800は、この機体が最後になりました。7月2日に就航し、スカイマークの737-800は29機になりました。
JA73ACは、ボーイングが造った最後の旅客用737-800として紹介されることもあります(最後に引き渡されたのは別の機体です)。
ここで、さっきのライン番号(工場で組み立てた順番)を並べてみます。国内最初のJA737Hが1830、JA737Nが2339、JA73ACが7597。同じ737-800でも、JA737NとJA73ACのあいだには12年近くの開きがあります。

後継の737-8
JA737Nのような737-800に代わっていくのが、ボーイング737-8です。737の新しい世代「737 MAX」の1つで、737 MAX 8とも呼ばれます。1号機のJA738Aは2026年4月29日(日本時間30日)にシアトルで引き渡され、5月4日に羽田へ着きました。日本の航空会社が737 MAXを受け取ったのは、これが初めてです。
5月28日に羽田—福岡線で就航し、その後はほかの路線でも使われています。計画では、737-8が13機、胴体の長い737-10が7機の、合わせて20機。737-8の座席は、今の737-800と同じ177席です。
見た目はJA737Nとかなり違います。737-8の翼の先、つまりウイングレットにあたる部分は、上と下の2つに分かれた形。スカイマークは737-800のウイングレットにハートを1つ描いてきましたが、737-8には赤いハートを2つ描いた「ダブルハート」が入りました。
エンジンは、ギザギザした形が目立つデザインです。胴体の最後尾も変わりました。APU(補助動力装置)の出口がある部分で、737-800の丸い形から、とがった形になっています。

11月7日の退役チャーター
チャーターは、時刻表で決まった定期便ではなく、貸し切りで飛ばす便のこと。JA737Nの退役記念のチャーターは、2026年11月7日(土)の日帰りのツアーとして、参加者を募りました。神戸空港を9時45分に離陸し、10時15分ごろに中部国際空港でローパス、11時30分に神戸へ戻る予定です。時刻は当日の進み具合で前後することがあります。
ローパスは、最初に書いたとおり、着陸の手前で車輪を着けずに上がっていく飛び方です。神戸の離陸では「ロケットスタート」も予定されています。ふだんの便と加速のしかたを変えて飛び立つ、特別な離陸です。
機内では、解説役の運航乗務員が操縦について話し、N号機の飛び方の特徴を聞ける航空教室もあります。神戸に戻ったあとは、13時15分から16時50分ごろまで、機体の外まわり、操縦室、ギャレー(機内の調理室)を見学して撮影する時間がとられています。
参加費は、席によって1人57,000〜73,700円。申し込みは抽選で、受け付けは10月6日に終わりました。天候や管制の指示、機体の状態によって、特別な飛び方や催しが変わったり取りやめになったりすることがある、とスカイマークは案内しています。
※定期便を飛ぶ最後の日と、退役したあとの機体の扱いは、10月20日の時点で発表されていません。
羽田・福岡・長崎のJA737N
2023年と2024年に、羽田、福岡、長崎で撮ったJA737Nです。どれも横から撮っていて、胴体の後ろに「JA737N」の文字が見えます。

福岡は8月の18時56分。夕方の光の中、滑走路を走るところで、奥に福岡の街と山が入りました。

長崎は2024年4月の雨の日です。この5分ほどあとに離陸したところが、翼の先の節に載せた写真です。

関連ページ
- 飛行機の機種を見分ける、787とA350や737とA320の違い(737の翼の先の型)
- 日本の特別塗装機一覧(スカイマークのピカチュウジェットBC1・BC2)
- 特別塗装機(スペマ機)とは
- 飛行機にもナンバープレート?機体記号(レジ)の読み方と書く場所
- Flightradar24の使い方(JA737Nが今どこを飛んでいるかを調べる)